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伊予賀儀屋は水の都で和の精神を持って一丸となり醸された地酒

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成龍酒造が蔵を構える愛媛県西条市は、愛媛県の東予地方に位置する人口10万人ほどの小さな街だ。空を見上げると、西日本最高峰の霊峰石鎚山の麓に酒蔵があることに気付かされる。また、西条は雪解け水による豊富な地下資源から「水の都」と呼ばれている。とくに「うちぬき」と呼ばれる西条独自の井戸から湧き出る自噴水は、1985 年に旧環境省の名水百選にも選ばれており、地域住民は水資源の豊かな恩恵を受けて暮らす。ちなみに西条の地下は水甕のような地形になっており、粘土層を棒で打ち抜くことで水が自噴してくるそうである。西条市内では至る所に「うちぬき」が存在している。

成龍酒造も敷地内の井戸から豊富に湧き出る弱軟水の柔らかな水を活かした酒造りを行う。湧水は酒造りだけでなく、酒造機器の洗浄や日常生活などの、すべての場面で使用されている。実際に7代目蔵元の首藤英友氏は大学進学で上京した際に水道料金がかかることを知って驚いたそうだ。

また、瀬戸内海燧灘に面している地域からも温暖で雨が比較的少ない気候である。そして、西条という地名は、鎌倉時代の荘園名にも見ることができ、その後の西条藩にも受け継がれてきたように歴史的にも由緒ある地名である。最も古くは「予章記」建暦元年条に河野通信は軍功により「新居西条の郷」を賜りとある。成龍酒造の創業は1877年、ちょうど江戸から明治へと時代が大きく変わる激動の時代に誕生した酒蔵だ。鍵屋本家の初代・首藤鹿之助が酒造業を興したのが始まりである。蔵元の屋号を冠した銘酒「伊予賀儀屋」は蔵元である首藤家が江戸時代まで庄屋米蔵の大切な鍵を預かる「鍵屋」を長年していたことに由来する。鍵屋は地域で信頼されていた証でもある。銘柄が「鍵屋」ではなく「賀儀屋」なのには理由があり、酒造りは仕込み水の中に鉄分が入っていることを嫌うことから「鍵」は縁起が悪く、お祝い事を意味する当て字である「賀儀」から命名された。

そして、成龍酒造の6代目が創業者の想いを受け継ぎ、今の時代に古き良き日本の伝統や文化を伝えていきたい、後世に先祖から続く想いを届けていきたいと願い、伊予賀儀屋は創業以前からの屋号 「鍵屋」を銘柄の名前として新たに2002年に誕生させた。現在は7代目蔵元の首藤英友氏が昨年に会社の代表に就任してことで、伊方杜氏と越智杜氏のもとで酒造りを行ってきた経験を持つ織田和明杜氏、副杜氏の首藤敏孝氏が中心となって、豊かに湧き出る名水と酒造りに適した良質な米、酒蔵に生きる微生物とで、ここでしか醸すことのできない蔵の味を追求する。また、原料米は愛媛県初の酒造好適米である「しずく媛」や「松山三井」などが多くを占めており、酵母に関しても「愛媛酵母 EK-1」をはじめとする「愛媛酵母」や「愛媛さくらひめ酵母」を使用することで、愛媛の気候風土を表現した酒造りを行っている。

2006年、7代目蔵元は日本酒を通じて故郷・西条の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたいという想いから、当時勤めていた東京の会社を退職し、一念発起、家業を継いで以来、地酒は故郷を凝縮した産物であることを忘れずに酒造りを行ってきた。それは「地のもの」を使うことで西条に恩返しをしていきたいという経営理念からで、これまで地域の人々に育ててもらった酒蔵だからこそ、「地のもの」を積極的に使用することで恩返しを実践していこうと考えているそうだ。「酒は夢と心で造るもの」。これからも「和は良き酒を醸し、また良き酒は和を創り出す」という和醸良酒の精神で小さな蔵の大きな夢の物語は続いていく。

文:宍戸涼太郎

写真:宍戸涼太郎

編集:宍戸涼太郎

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