


愛媛県松山市にある道後温泉は日本最古の温泉といわれ、四国を代表する観光地。伝統と風格を誇る道後温泉本館を中心に旅館街が広がる。道後温泉は3000年の歴史を誇り、兵庫の有馬温泉や和歌山の白浜温泉と並ぶ日本三古湯の一つにも数えられている。道後温泉は、「日本書記」や「源氏物語」などの様々な文献にも登場し、大国主命が少彦名命の病を治した話や聖徳太子の来浴など、日本最古の温泉として相応しい言い伝えも数多く残されている。また、明治23年(1890年)、初代道後湯之町町長に就任した伊佐庭如矢は、当時老朽化していた道後温泉本館の改築に取り組んだ。多くの反対意見もあったことで一時は反対派が宝厳寺に立てこもって抵抗があったなか、「100年の後までも、他所が真似できないようなものを作ってこそ、はじめてそれが物を言うことになる」という道後の繁栄を願う伊佐庭如矢の強い気持ちと覚悟によって、明治27年(1894年)、道後温泉本館改築の偉業を成し遂げた。

道後温泉には古代・白鷺の伝説が語り継がれており、「伝云、古此湯少し湧出して洴澼たり、鷺の足かたはなるが、常々来りて足を浸す、幾程となく平癒したり、故に此所を鷺谷と云」
宝永7年(1710年)に完成した郷土地誌「予陽郡郷俚諺集」には、昔脛に傷して苦しんでいた一羽の白鷺が岩間から噴出する温泉を見つけ、毎日飛んできてその中に脛を浸していたところ、傷は完全に癒えてしまい、白鷺は元気に勇ましく飛び去ったと書かれている。そして、これを見た人たちは大変不思議に思い、入浴してみると爽快で疲労を回復することもでき、また、病人も入浴しているといつの間にか全快したことから、盛んに利用されるようになった。道後温泉は白鷺により発見され、人々がその霊験を知って入浴するようになったと伝わる。後世の人たちがこの伝説を記念するために、鷺石と称する石を置き、現在は道後温泉駅前も放生園に移され、保存されている(引用Webサイト:https://dogo.jp/about 2026.610時点)

法興6年(596年)、聖徳太子は僧恵慈および葛城臣らを従えて道後に来浴された際、明媚な風光と良質の温泉を推賞せられ、これを記念するために、湯の岡に石碑を建立されたと伝わっています。当時は椿が美しく生い茂り、霊妙な温泉が平等に恩沢をほどこす様はまるで寿国(理想の国)のようだと称えている。熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出な」は、斉明天皇率いる船団が出港するにあたり、額田王が詠んだ歌といわれている。道後には、斉明天皇のほか、舒明天皇、中大兄皇子など、皇室の方々の来訪の記録が残っている。(引用Webサイト:https://dogo.jp/about 2026.610時点)

創業1895年の水口酒造は道後温泉本館が建築された翌年に産声を上げた。道後唯一の造り酒屋として代表銘柄である「仁喜多津」は、これまで地元を中心に流通していた。また、1994年には酒税法が一部改正されたことをきっかけに、1996年からは水口酒造も地ビール「道後ビール」の製造を開始する。

キャッチフレーズの「湯あがりビール、冷えてます。」の看板はお馴染みである。そのほかにも「ニキタツ製氷」などの製氷事業も行っており、今日に至るまで多角的な経営で酒蔵の歴史を紡いできた。

しかし、6代目蔵元の水口皓介氏が就任してからは「道後から世界へ、世界から道後へ」という理念を掲げながら日本酒の製造を中心とした経営方針に転換を図る。2025年、創業から130年の節目の年に主力4商品の全面リブランディングを行った。仁愛なる喜び多き津の意味が込められた「NIKITATSU」は「道後へ足を運びたくなる酒」を目指し、愛媛県の酒米「しずく媛」や「松山三井」、西日本最高峰の石鎚山・高縄山系の伏流水、愛媛さくらひめ酵母などの地元の素材を用いて酒造りを行う。今後は観光に依存しない強い蔵を目指しながら、都心での認知拡大と、成長を続ける海外市場への展開に踏み出すことを誓う。

水口皓介氏は首都圏の酒販店を訪ねては誠実に酒造りの近況を報告し、都内の日本酒イベントにも積極的に出店するなど銘柄の認知度向上のために奔走する毎日だ。また再出発を果した水口酒造では限られた敷地と設備環境のなかで、菊池賢也杜氏はニキタツ製氷の氷を活用して醪を冷やすなどの創意工夫を施しながら、華やかで爽やかな高品質な日本酒を製造する。水口皓介氏は老朽化した酒蔵を、スピード感を持ちながらも計画的に必要な投資を行っていくことで設備環境を充実させて更なる酒質向上を図りたい考えだ。

蔵元と杜氏の対話から酒蔵の方向性が決まることも多く、積極的に意見交換を行いながら上を目指す。まずは日本酒のコンテストで評価されるものを造り、これぞ正統派と呼ばれるに相応しい日本酒を愚直に追求する。その結果、2026年には「愛媛県新酒鑑評会では最高賞(県知事賞)を受賞する快挙を果たした。これが菊池杜氏にとっては手ごたえを掴んだ瞬間でもあり、自信にも繋がったそうだ。

現在は来季の造りに向けて今期の反省や検証を行いながら、酒蔵のメンテナンスや清掃、醸造計画を立てるなどの準備を進めている。また、首都圏の酒販店からは水口酒造の最大の武器は、アルーコール添加の技術の高さにあると言われており、大吟醸酒の更なる進化が期待されている。これからも6代目蔵元と杜氏が二人三脚で酒蔵を発展させながら、道後温泉の白鷺伝説のように、首都圏、世界へと羽ばたいていく。
文:宍戸涼太郎
写真:宍戸涼太郎
編集:宍戸涼太郎







