


創業1877年の酒蔵は茨城県つくば市で酒造りを行う。茨城県つくば市は、茨城県の県南地域に位置する街として知られ、業務核都市、国際会議観光都市にも指定されている。また、筑波大学をはじめとする学術・研究都市として筑波研究学園都市は誕生し、1950年代の東京が急激な人口増加によって過密状態に対して解決を図ることを目的として1968年以降に開発された。

市域には多数の研究機関が立地しているほか、つくば市の北端には日本百名山である筑波山を擁しており、茨城県を代表する歴史のある観光地にもなっている。そして、2005年には首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス(TX)が開業し、市中心部の「つくば駅」から東京都千代田区の「秋葉原駅」まで最短45分で結ばれていることで、人口が増加する街として注目を集める。

「浦里」は、6代目蔵元杜氏の浦里知可良氏が醸す、新銘柄である。6代目蔵元杜氏が就任した翌年の2020年に誕生した新銘柄は、「小川酵母を極める」ことを追求し、酒造りを行っている。小川酵母とは、「明利小川酵母」や「きょうかい10号酵母」とも呼ばれ、酸が少なく穏やかな味わいと、きめ細かく爽やかで上品な吟醸香を生み出すのが最大の特徴として知られる。

また、香りは華やかだが、派手すぎず上品な酒質になりやすいといわれている。「きょうかい10号酵母」の分離者は、小川知可良博士。「きょうかい10号酵母」の歴史は、小川知可良博士が仙台国税局鑑定室長時代の1951年から1952年にかけて東北6県の数百という酒蔵の醪から集めたうちの一つで、どこの酒蔵のものであったかは未だ不明である。同庁退官後、水戸市にある明利酒類に入社し、同酵母の分離培養を成功させた。そのため、「きょうかい10号酵母」は「明利酵母」とも呼ばれており、茨城県で生まれた酵母としても知られている。

浦里知可良氏の父親である5代目蔵元の浦里浩司氏は、茨城県水戸市の明利酒類にて開発された「小川酵母」に惚れ込み、この酵母を用いた酒造りを軸として歴史を紡いできた。そして、1986年に新発売された銘柄が「霧筑波」である。当時はラベルにイラストが描かれているものは非常に珍しく、筑波山のイラストが描かれていたことで注目を集めた。また、5代目蔵元は「小川酵母」に心酔していたことから、息子が生まれると小川知可良博士にちなんで浦里知可良と名付けた。本人も6代目蔵元として子供の頃から酒蔵を継ぐことを意識していたことからも進学先として東京農業大学醸造科学科を選択。いつか酒蔵を継いだ際には自分の名前でもある「小川酵母を極める酒造り」を行うことを大学在学中には決めていたそうだ。大学では小川酵母の選抜を行い、新酵母の取得を目指して研究に励んでいたそうである。

自身の道しるべとして原点でもある「小川酵母」。自分の醸造人生を賭けて小川酵母の酒造りを極める。浦里知可良氏は1年目は前杜氏のもとで酒造りを行い、酒蔵を継いだ翌年からは「令和元年度 茨城県清酒鑑評会」純米吟醸の部で、首席となる県知事賞を受賞する。その後も「全国新酒鑑評会 金賞」、「第91回 関東信越国税局酒類鑑評会」吟醸酒・純米吟醸の部 優秀賞、「令和元酒造年度 南部杜氏自醸清酒鑑評会」吟醸酒・純米酒の部 優等賞を受賞するなど、真の実力を発揮。20代の杜氏が賞を総なめすることは前例のない快挙であった。浦里酒造では全国新酒鑑評会用の日本酒以外においても「小川酵母」で醸しており、浦里酒造の「小川酵母」に対する強い思い入れと覚悟が感じられる。(小川酵母以外を使用するのは南部杜氏自醸清酒鑑評会用の大吟醸にM310酵母を使用。)今後も「小川酵母」と共に頂を目指す旅路は続く。そして、オール茨城産にこだわった「浦里」が旋風を起こすことが期待される。

文:宍戸涼太郎
写真:宍戸涼太郎
編集:宍戸涼太郎




