コンテンツへスキップ ナビゲーションに移動
  • SakeBase本店
  • Q9
  • 蔵レポ
  • 僕と日本酒の100日戦争!
  • ONLINESHOP

大胆不敵な杜氏の醸す、繊細で美しき酒

  1. HOME
  2. 蔵レポ
  3. 大胆不敵な杜氏の醸す、繊細で美しき酒

兵庫県宍粟市(ひょうごけんしそうし)で「播州一献」を醸す、山陽盃酒造。創業1837年(天保8年)から続いてきた歴史ある酒蔵は2018年11月8日に火災に見舞われた。これにより酒蔵3000平方メートルのうち約1500平方メートルが焼失してしまう。そして、仕込みが始まったばかりの酒蔵は復旧作業を行うこととなったのだが、なんと7代目蔵元の壺阪雄一さんは火災の直後も酒造りを続行する決断を下す。不幸中の幸いにも死傷者はいなく、醸造設備のある仕込み蔵やボイラーの被害は免れられたことから酒造りを続行することができた。まさに「窮すれば通ず」である。それに同業者や取引先がボランティアとして復旧作業に駆けつけてくれたことも大きかったと振り返る。また、焼失を免れた梁や柱なども、とり壊さずに活用して酒蔵を再建したこともあり、無事に150年以上の築年数を誇る母屋は歴史を繋ぐことができた。

改修後はワンランク上の酒造りを目指して、食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の認定を受けられる衛生設備を導入するなど、より衛生的で高品質な酒造りを目指せる環境の実現や蔵元直営店(播州一献ストア)として気軽に買い物ができる広々とした空間へと生まれ変わることができた。

兵庫県は山田錦の一大生産地として知られており、生産量は16766t(令和2年産)であり、全国シェアの約6割を占めている全国一の山田錦の産地。山田錦の特徴は、大粒であることから高精米が可能であり、心白が大きいことから、良い麹をつくりやすい、雑味の原因となるたんぱく質が少ないなど、山田錦は日本酒づくりに必要な要素を多く兼ね備えていることから、「酒米の王様」として重宝されている。山田錦の生産に適した「特A地区」は、山陽盃酒造が蔵を構える兵庫県宍粟市とは車で約1時間の距離にある。

このことから7代目蔵元杜氏の壺阪雄一さんは、六甲山北側の吉川地区で最高品質の山田錦が育てられていることに着目して酒造りを行う。山陽盃酒造は「山田錦」を中心としながらも、兵庫県原産の「兵庫北錦」や「兵庫夢錦」などの米だけを使用する。これは酒蔵が地域の地酒としての役割を担っていくことが日本酒の未来を明るく照らすという想いから、原料米は県産米という基準にとどまらず、兵庫県原産の品種にこだわり限定しているそうだ。また、日本酒の原材料として最も多くを占めている仕込み水は、兵庫県最高峰の氷ノ山の伏流水を使用する。ゆっくりと長い年月をかけて磨かれた水は自社の井戸から汲み上げられており、灘の宮水とは特徴の異なる、柔らかで清らかな軟水である。

代表銘柄の「播州一献」はついつい盃を重ねてしまう飽きのこない酒を追い求めてきた。「一献」は「酒宴で最初に酒と肴が出されること」という意味合いを持つ言葉であることからも、食事との相性を考えて造られている。そして、山陽盃酒造は「播州のものを、播州の蔵が、播州の水によって醸す」という信念のもと、水や米などの豊かな自然の恩恵を存分に受けながら、米の旨味を引き出しながら、キレのあるドライな味わいを表現する。近年は食事との相性からも辛口の日本酒が好まれる傾向にあることも追い風となり、「播州一献」はバランスがよく調和のとれた味わいで飲み疲れもしないことから、食卓のシーンで重宝される日本酒として国内外から高い評価を集めている。

山陽盃酒造では明廷鉱山に天然の貯蔵庫を所有する。そこでは独自の熟成管理を行っており、鉱山の中は年間を通じて気温が13~15度程度に保たれていることに着目し、自然の力を活用した綺麗で味わい深い熟成酒を追求する。昨今の日本酒業界は気候変動の問題から電力消費を抑えようと日本酒業界全体の課題として各酒蔵で取り組んでいる。天然冷蔵庫であれば、電力に頼らずに日本酒を低温で熟成することができる。このように山陽盃酒造は原料米や仕込み水だけでなく、熟成などの工程でも地域性を表現することに注力し、播磨の風景を映し出す酒造りを実践する。播磨は「播磨国風土記」の物語からも分かるように、神話の時代から酒造りが続く、日本酒発祥の地。山陽盃酒造も播磨の自然に恩恵を授かる酒蔵として、これからも播磨の歴史や文化を伝承する役割を担っていく。

文:宍戸涼太郎

写真:石井叡

編集:宍戸涼太郎

Copyright © All Rights Reserved.

Powered by WordPress with Lightning Theme & VK All in One Expansion Unit by Vektor,Inc. technology.

MENU
  • SakeBase本店
  • Q9
  • 蔵レポ
  • 僕と日本酒の100日戦争!
  • ONLINESHOP
PAGE TOP