福島県の新世代を担う“松崎酒造店”

松崎酒造店の始まり

仕込みタンクの景観

松崎酒造店は、福島県岩瀬郡天栄村で酒を醸しています。創業は明治25年の酒蔵で、のどかな田園風景が広がるこの天栄村はかつて20軒ほどの酒蔵がひしめいていたといいます。しかし、時代とともにひとつ、またひとつと姿を消し今も酒造りを行っているのは松崎酒造店を含めた2軒のみとなってしまったそうです。「廣戸川」という酒名の由来は、地元天栄村に流れる「釈迦堂川」の旧名がかつて『廣戸川』と呼ばれていたからです。

業界でも大きな期待のかかる、松崎祐行氏の改革

松崎酒造店6代目杜氏の松崎祐行氏

創業以来、地元の人々から親しまれていた「廣戸川」ですが、2011年の東日本大震災の影響で、それまで酒造りをしていた南部杜氏が心労で倒れてしまったそうです。当時、帝京大学理工学部バイオサイエンス学科を卒業し、福島県清酒アカデミーを卒業したばかりであった現蔵元杜氏の松崎祐行氏は、「松崎酒造店の廣戸川を多くの人に呑んでもらい、廣戸川を通して笑顔にしたい!」という想いを掲げ、季節労働型の杜氏制を辞めて、蔵人の1年目から杜氏となりました。そして自分と一緒に松崎酒造店の日本酒を本気で醸したい若い人を集めて、現在では松崎酒造店の蔵元松崎淳一氏と6代目杜氏の松崎祐行氏を中心に、同世代の蔵人や20代前半の蔵人も多く在籍し、若い力とベテランによる熟練の技で、酒造りに取り組んでいます。

地元の酒から全国的な日本酒に!

新世代を担う「廣戸川」

松崎氏が現体制を築いた1年目で醸した、新たなる「廣戸川」は、全国新酒鑑評会において吟醸部門、純米部門において「平成23年酒造年度福島県新酒鑑評会」で金賞を受賞するなど、松崎酒造店の名を全国に轟かせるきっかけとなりました。その後に行われた全国新酒鑑評会でも5年連続で金賞を受賞し、全国の有名蔵が集まる日本酒のコンテストで好成績を残した結果、就任前は200石ほどだったという生産高を2011年からの5年間で約3倍にまで伸ばしました。さらに世界一美味しい市販酒を決める「SAKE COMPETITION2016」で廣戸川を出品した際は、純米酒部門で第二位を受賞するなどの素晴らしい功績を残しています。

風光明媚な天栄村で醸される「廣戸川」

天栄米は世界一のお米と評されている

「廣戸川」は全量純米という方針を採用し、仕込水は天栄村の地下から汲み上げたミネラル分を含んだ井戸水を使用し、米は福島県が開発した地元で生産された上質なブランド米「天栄米」を使用し、福島県の酒造好適米の「夢の香」を使用しています。溶けやすく砕けやすい「夢の香」は大量な仕込には向いていないとされますが、少量仕込で仕込まれる「廣戸川」においてはその米の特質を最大限に生かすことができ、栄養分の多い「夢の香」の持つ米の旨みを十分に引き出すことに成功しています。お米の旨味を活かした柔らかで飲み飽きしない廣戸川は、穏やかな天栄村の景色や懐の深さを感じることができるお酒として多くの方に親しまれています。

松崎氏の酒造りに対するこだわり

改築した麹室の様子

酒造りにおいて目標に掲げているのは、料理を引き立て、主張性のある酒を醸し、温度や環境が変わっても酒質が変質しにくい、しっかりした酒を醸すことだと語ってくれました。そして1杯目より2杯目で楽しめるような日本酒として、その中でも大切にしているのは、口に含んだ時の旨味と甘味のバランスだといいます。2016年(平成28年)には酒造りにおいて心臓部と言われている麹室を50年ぶりに改築しました。新しい麹室が麹菌にとって活動しやすい場所にするのにも、多くの時間を要し、苦労したそうです。また、醸造の部分でも毎年酵母の種類を変えたり、種麹の種類を変えるなどの研究を通して、「廣戸川」の新たな可能性を探っているといいます。丁寧で謙虚な姿勢を持ちながらも、新しい挑戦を忘れない松崎氏は、高い醸造技術を持ち、日本酒の名醸地として知名度を上げている福島県の日本酒の中でも、多くの方に手にとってもらえるような日本酒を造るには、造り手側も進化し続ける必要があると語ってくれました。

住所:福島県岩瀬郡天栄村下松本要谷47‐1


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