酒蔵の正面からは金婚の銘柄のオブジェと煙突を眺めることが出来る。

東京都東村山市久米川町で「屋守」「金婚正宗」「東村山」を醸造する豊島屋酒造は近年、東京で美味しいお酒を造る酒蔵として地酒ファンから注目を集めている酒蔵です。特に「屋守」という銘柄はバランスが良く、フレッシュな味わいで人気を博しています。「屋守」と書いて「おくのかみ」と読み、「家業を守る」という意味合いが込められているそうです。「なんとしても東京で美味しいお酒を醸したい」という、熱き想いの田中孝治氏が2002年に立ち上げたブランドです。酒蔵の未来永劫の発展を目指すことを目標に掲げ、6人の江戸っ子蔵人が丁寧にお酒を醸しています。また、豊島屋酒造の「金婚正宗」という銘柄は明治天皇の銀婚式をお祝いする願いを込めて命名され、明治神宮と神田明神の東京二大神社のお神酒として奉納されている唯一のお酒です。樽酒を結婚式に用いる習慣も豊島屋酒造が最初だったと伝えられています。「金婚正宗」は縁起の良いお酒として、地元の人を中心に多くの支持を集めています。

特約店限定銘柄として人気を博している「屋守」。

樹齢400年の欅の木と共生する酒蔵。

蔵の正面には大きな欅の木が佇んでいる。

豊島屋酒造の創業は1596年で、歴史のある酒蔵としても知られています。「関ヶ原の戦い」が1600年に、「江戸幕府開府」が1603年と歴史書に記されているので、それよりも豊島屋酒造の創業の方が昔ということになります。蔵の象徴的な存在の欅の木は東村山市の保存樹木に指定されており、樹齢400年を超えているそうです。豊島屋酒造の繁栄をずっと見守ってきた欅の木として、今日まで大切に保護されています。欅の木は豊島屋酒造の酒造りにおいて、重要な役割を担っており、田中孝治氏曰く、「大きな木のある地下周辺には豊富な水が貯水されており、たくさんの水を必要とする酒造りにおいて、大きな木があることは蔵にとって大切な財産です。」と説明されているのが印象的でした。実際に、樹木には保水する性質があるといわれており、大木の保水力は凄く、自然界の緑のダムと表現されるほどです。そんな、豊富な水が湧き出る恵まれた土地で豊島屋酒造は約400年間、欅の木の成長と共に酒造りを取り組んできました。蔵の敷地にある井戸、地下140mから汲み上げた水を仕込み水として使用し、厳選した良質な酒米を用いて、蔵人が日々研鑽した技術で、「人と人を繋ぎ、笑顔にする美酒」を醸しています。

欅の木は東村山市の保存樹木に登録されている。

スーパースターの出身地、東京都東村山市。

西武新宿線東村山駅の駅前には志村けんさんの「アイーン」ポーズの銅像が設置されている。

「8時だョ!全員集合」や「志村けんのバカ殿様」などの数々の伝説的人気番組を生み出してきた、東京都東村山市出身のスーパースターとして知られる志村けんさんの銅像が2021月6月に西武新宿線東村山駅前に設置され、多くの人が銅像を一目見ようと東村山駅を訪れています。スーパースターゆかりの地を、散策してみてはいかがでしょうか。

蔵見学や直売店のある酒蔵。

4年前にリニューアルオープンした豊島屋酒造の直売店。

豊島屋酒造の直売店は4年前にリニューアルオープンして、多くの人が酒蔵見学(事前予約制)やSODA!日本酒(週末直売所限定販売)、ワークショップを求めて来店されます。直売所の営業時間は平日は9時から17時、土日は13時から17時で、「NEON」「金婚」「東村山」をお土産として購入することが出来ます。9月からはじまる酒造りの季節には、真剣な酒造りの現場を見学した後に、試飲が可能です。

直売所に吊るされている杉玉。

文:宍戸涼太郎

写真:石井叡