なんじゃもんじゃの木が存在感を放つ神社。

広大な森の中にある神崎神社の本殿。

千葉県香取郡神崎町神崎本町に鎮座する神崎神社は神崎森にあり、周囲全体は国が指定する天然記念物に登録されています。神社の創祀は651年と伝えられている歴史の長い神社です。神崎神社社殿の右わきにある大クスは、古くから「ナンジャモンジャ」という呼び名で、地元の人で知らない人はいない有名なクスノキです。樹高は約25mもあり、主幹は1907年に社殿の火災で焼失してしまい、高さ7mほどのところで切断されていますが、根元から枝分かれした5本の木が親木を取り巻いている状態で参拝に来る人々に力強い大木という印象を与えています。有名なエピソードとして、水戸藩主の水戸黄門が日本各地を漫遊の旅をしていた1674年に神崎神社を訪れた際に、「この木は何というもんじゃろうか」と自問自答したという逸話から名付けられたクスノキとしても知られています。

神崎神社社殿の右わきにあるクスノキは「ナンジャモンジャ」という名前が付けられている。

原点に立ち返り、自然と対話する寺田本家。

寺田本家の銘柄「五人娘」や「香取」が並ぶ。

神崎神社が鎮座する神崎森に隣接した場所に寺田本家はあります。寺田本家の「五人娘」や「むすひ」は健康志向の高いお客様や日本酒マニアから絶大な人気を誇る銘柄として知られています。「いのちが喜ぶ発酵」をテーマに寺田本家は30年以上、少しづつ変化を続けながら、自然や自然酒づくりと向き合い続けてきました。蔵人たちは蔵にいる微生物と対話を繰り返しながら、自然体でのお酒造りを心掛けてきました。2010年からは地元農家の方々の理解や協力もあり、全量無農薬米での酒造りに取り組んでいます。寺田本家の自社田では、毎年、田植えや稲の収穫イベントを開催し、大人から子供まで多くの参加者で田んぼが賑わいます。多くの方々が関わった田んぼから収穫したお米で、お酒を醸すことを大切にしているそうです。寺田本家では酒造りの季節になると蔵に響く、蔵人たちの酛摺り唄も神崎本町の幻想的な光景の一つとして知られています。今では酛摺り唄を唄う酒蔵も減ってしまいましたが、時間を計り、息をぴったりにして作業を合わせる、眠気覚まし、安全醸造を願うことを目的に、寺田本家では今でも酛摺り唄を唄いながら、伝統的なお酒造りを理念に掲げているそうです。その活気溢れる様子は、蔵に訪れた見学者を魅了しています。

寺田本家のレンガづくりの正面入口。

寺田本家のお酒造りに使用する仕込み水は、蔵に創業時から豊富に湧き出る「ナンジャモンジャ」のクスノキがある神崎森の御神水を使用しています。その他の使用される素材も厳選しており、2016年からは蔵にいる麹菌を採取し、自家培養した麹菌で麹米などを作っています。寺田本家は蔵の周辺で栽培されるお米や隣接する神崎神社の御神水、蔵に棲みつく微生物の働きを上手に利用して、その土地を重視した原点回帰の酒造りに取り組んでいます。サスティナブルが重要視される現代において、昔から持続可能性を追求してきた寺田本家は今後も輝きを放つ存在として、現代に生きる人に多くの気づきを与えていきます。

「うふふで発酵」と書かれた杉玉。

発酵暮らし研究所&カフェうふふ

発酵暮らし研究所&カフェうふふの営業日は不定期営業で、営業日は主に木曜日と金曜日。

「発酵暮らし研究所&カフェうふふ」は築40年の古いアパートを蔵人や寺田本家のファンの方々と共に、リノベーションして造られた発酵料理やスイーツが楽しめる空間です。酒粕や麹、発酵の恵みが詰め込まれたプレートランチの他にも、さまざまなイベントやワークショップも開催されています。寺田本家を訪れて、発酵を中心にすえた健康的な生活を体感してみてはいかがでしょうか。

寺田本家から発売されているノンアルコールの「発芽玄米のうふふのモト」。

文:宍戸涼太郎

写真:石井叡