甲賀の機動戦士“美冨久酒造”

甲賀市の歴史

琵琶湖の南、三重県との県境にある滋賀県甲賀市は、昔は京都から江戸へとつながる東海道が通り、水口宿・土山宿の宿場町として大いに賑わい、多くの旅人が行き交った町として栄えました。
また甲賀流忍者の里としても知られており、現在でも忍術屋敷、忍術村などの忍者に関連した施設があります。甲賀忍者を世に知らしめた出来事が、長享元年(1487年)の鈎の陣です。
これを機に、望月出雲守を筆頭とする、甲賀武士団の神出鬼没の戦術や、その高い戦闘能力の印象が、「甲賀忍者」と呼ばれるようになり、その後の戦国時代には、各戦国大名を影から支えていました。また、甲賀市は日本六古窯の一つにも数えられる信楽焼発祥の地でもあり、現在も「ほろ酔い器と地酒展」など日本酒を盛り上げるツールのひとつとして発展しています。

忍者の里、甲賀市で酒を醸す酒蔵

美冨久酒造は、1917年(大正6年)に滋賀県愛知川の地で創業した酒蔵です。名前の由来は、「美しく、冨くよかなのが、恒久に続きますように」との願いを込めて2代目蔵元が命名しました。東海道五十三次・50番目の宿場町として栄えた「水口宿」にあり、東海道を挟んで酒蔵が建っています。2017年に創業100周年を迎え、“美冨久”と“三連星”という2つの銘柄を醸しています。“美冨久”は山廃仕込を中心に蔵に住む天然の乳酸菌を用いた醸造方法で、味わい深く米の旨味を楽しめる日本酒です。“三連星”は速醸の吟醸造りで、あまり日本酒を飲まない方でも美味しく飲める、フレッシュさとフルーティーさが特徴的な日本酒です。美冨久酒造は日本酒や職人の世界、日本の伝統文化ををより身近に感じてもらうために、蔵を積極的に解放しています。現在では、年間約1万人が蔵に見学に来るそうです。蔵には見学コースがあり、蔵人が丁寧な案内をしてくれます。2階に上がると昔の酒造りに使用されていた用具などを展示した、ギャラリーが設けられています。蔵の歴史がわかりやすく、簡単に理解できるようにギャラリーには、酒蔵の誕生から現在までの美冨久酒造の歴史年表が掲載されています。

また扉を一枚挟んだ所には、発酵タンクを上から見下ろせる場所もあり、発酵の経過を楽しむことができます。また、団体のお客様が来た時にも楽しめるよう、大部屋のようなスペースを設け、蔵の説明や、実際に蔵内では試飲を楽しんでもらうこともできます。来訪者へのおもてなしを考えた蔵見学により、20年前から見学者が増えてきており、団体客のお客様もたくさん来るとのことです。

消費者に寄り添った酒蔵の雰囲気作り

写真右⇨美冨久酒造4代目蔵元の藤居範行氏(Sake Base×美冨久酒造 試飲会にて)

三連星の愛飲者を増やす為にも、5年前から毎年3月に蔵内での蔵祭りを開催し始めました。開放的な蔵見学、屋台などを用意したイベントということもあり、去年の蔵まつりでは約500人もの来訪者が訪れたそうです。また、家族連れの方にも来ていただきたいという思いから、子供でも楽しむことができる施設を用意し、祭りを通して伝統的な酒造の風景を子供たちにも知ってもらう、その子供たちが成人になった時にあの時はよく行っていたな、いつか美冨久酒造の日本酒を飲んでみたいなと思ってもらい、大人になった時にはどこか懐かしみながら日本酒を楽しんでもらいたいといいます。そこには毎年、多くの方が蔵に来ることを楽しみにしていただくこと、そして日本酒を楽しく飲んでもらうこと、美冨久酒造の熱き想いを多くの方に感じてもらいたいからだといいます。

さらに、蔵に訪問された方には、毎月の月末に蔵でしか手に入らない、限定品の日本酒を量り売りで購入することができるイベントも開催しています。今年の2月に醸した限定品の“純米吟醸 冬のスペシャルブレンド”は、4代目蔵元の藤井氏が自らブレンドの提案をし醸したものです。蔵の魅力の発信や価値化も進めていくなかで、滋賀県を盛り上げていきたいと語っていた藤井氏は、ここ10年で滋賀県内の酒蔵が50軒から30軒にまで減ってしまった酒造業界の現状を少しでも変えたい、そして滋賀の土地、風土の魅力を広げる役割を担いたいと語ってくれました。

疾風のごとく現れ、長い年月で勢いを増した三つの日本酒“三連星”

美冨久酒造の代表銘柄“三連星”シリーズ

2007年(平成19年)に代表銘柄である“三連星”を醸造し始め、それまで取り組んでいた山廃仕込みの製法に加え、速醸仕込みによる酒造りも取り入れ始めました。フレッシュでフルーティーな風味の日本酒を醸し、日本酒を普段飲まない人や、日本酒をこれから知りたいという若者に向けて発信し、日本酒の魅力を発信するための入り口になる日本酒を目指し醸したそうです。30代の3名で新しい酒造りにチャレンジすることから、“三連星”という名前をつけたそうです。

原料米は滋賀県産にこだわり、吟吹雪山田錦渡船6号という米で酒を醸し、蔵元の藤居範行氏が4代目蔵元ということもあり、美冨久酒造の名を継承してきた3代目蔵元までの敬意を表したうえでの三という数字から命名し、三連星のストーリー性を忠実に表現しています。そこには、三がずっと連なり星のごとく輝き続けて欲しいというメッセージ込めていると言っていました。また、アニメの機動戦士ガンダムの作中に出てくる「黒い三連星」という3つのキャラクターからなる、チームにあやかって命名し、ガンダム世代の30代の人にも幅広く知ってもらうための遊び心だともいいます。

三連星は、4年の歳月をかけて、純米酒、純米吟醸、純米大吟醸による三種類の日本酒を造ってきたといいます。純米酒は、シャープでキリッとした飲み口に、キレのある酸味が特徴的な日本酒です。

純米吟醸は甘さがあり、心地の良いふくよかな酸味が特徴的な日本酒です。

純米大吟醸は、すっきりとした甘みに、なめらかな酸味で切れるような日本酒です。

定番商品としての開発期間は5年も要したそうです。また、この三連星は酒販店限定商品であり、数ではなく質にこだわり熱意を持って三連星や滋賀県の魅力を伝えてくれる酒販店にしか卸さないというこだわりを持ち三連星を醸しています。

三つの連なりから誕生した日本酒は、ジェットストリームアタックのような勢いと情熱で、飲む人の心を鷲掴みにしています。また、三連星は、ラベルのデザインにも施しを加えています。純米酒である黒ラベルは、蛍光塗料が塗られており、薄暗い酒屋の冷蔵庫の中でも目立つような仕様になっています。純米吟醸の白ラベルは、裏からエンボス加工を施し、文字を盛り上がらせており、お客様に興味を持ってもらえるような効果をもたせています。純米大吟醸の赤ラベルは、温度計になっており、お酒の温度が10℃以下になると白い文字がピンク色に変化し、飲み頃の適温を教えてくれるような仕掛けを導入するなど、飲み手を笑顔にするようなユニークな工夫がされています。三連星の販売開始から、10年以上経過した今でも藤井氏は常に向上心を持ち続けており、現状に全く満足していないそうです。美冨久酒造を応援いただいている方や日本酒愛好家の方、そういった方たちには伝わっていても、日本酒のことを全く知らない方に向けた飲酒人口の獲得への課題は、まだまだ多くあるといいます。だからこそポップでユニークな三連星を日本酒に全く興味がなかった層に伝えていきたいと考えています。

他にも山廃造りの美冨久という銘柄が、存在することも伝えていきたいと語ってくれた藤井氏は、年齢や性別によっても、日本酒の趣向は違うため様々な年代に向けて楽しんでもらえるような日本酒を醸していきたいとも語ってくれました。

住所:滋賀県甲賀市水口町西林口3-2


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