日本の田んぼを守る酒蔵に!“仁井田本家”

“山紫水明”と評される郡山の風土

郡山市は福島県の中央に位置し、北に安達太良山を仰ぐ安積平野は粘土質の土壌で農作物がよく育つ水田が多く、猪苗代湖からの清らかな水と澄んだ空気にも恵まれています。また内陸型の気候も米づくりには最良の自然条件を備えており、米処して知られている郡山市では、特産品として「あさか舞」というお米が有名です。広大な安積平野と開拓等にちなみ、ひらがなの「あさか」の地名と美味しくて舞うような気持ちにさせる「舞」を組み合わせた親しみやすく優雅なイメージを表現した郡山産のおいしいお米です。冬には田んぼの近くに白サギが多く集まるなど、自然との対流を感じる風土が魅力的です。他にも甘みが強くジューシーな味わいの布引高原大根や、12か月以上肥育し、しつこさのない甘みと食感が特徴のうねめ牛など、郡山の風土を生かした名産物が多くあります。

創業300年を経た酒蔵

仁井田本家18代目蔵元兼杜氏の仁井田穏彦氏(写真右)

福島県郡山市で蔵を構える仁井田本家は、創業1771年(明和8年)の酒蔵です。1966年(昭和41年)に、先代の17代目蔵元仁井田穏光氏が仁井田本家の理念である「自然酒醸造」を全国で初めて達成し、現18代目蔵元兼杜氏である仁井田穏彦氏まで実に60年以上受け継がれており、1997年からは生産農家の方々の高齢化によって原料である自然米が確保できないこと、契約農家の方々の生産を代わりに担っていける役割となる必要があることから、蔵付近の自社田では自然米栽培を行っています。また、2009年には農業生産法人「仁井田本家あぐり」という有限会社を設立し、同年の9月には有機農産物として農林水産省から有機JASの認定も取得するなど、自然の力だけで生産された食品の価値向上に大きく貢献しました。また日本酒の衛生面にも十分配慮し、日常の清掃を通した徹底除菌や蔵内の床板などに柿渋を塗り込み清潔な環境を常に維持し酒造りに取り組まれています。

大きな意味をもたらした天災

2011年から、現蔵元兼杜氏の穏彦氏が全量無農薬無化学肥料の自然米100%&全量純米蔵へとシフトチェンジを行いました。しかし2011年に多大な被害を与えた東日本大震災により、仁井田本家も酒蔵機材の一部が破損してしまいました。機材は短期間で修復できたものの、福島県への風評被害が大きなイメージダウンとなり、それまで共感を得ていた人々も身の回りから離れてしまったといいます。さらに2011年は、仁井田本家が創業して300周年という節目の年、そして自然米100%による酒造りを提唱した「自然派宣言」を発表した年だったこともあり、なかなか現実を受け入れることが難しかったといいます。

天災を乗り越え原点回帰へ

創業300周年という節目と同時に起きたこの天災は、どういった意味を持っているのかを深く考えた穏彦氏は、先代の蔵元の方々も多くの困難を乗り越え、伝統文化の継承や繁栄に努めてきたからこそ、今に繋がっていることだと感じたといいます。伝統文化の継承は容易ではない、だからこそ自分もこの現状を乗り越え仁井田本家の伝統・文化・魅力を発信し飲んで美味しいと思ってもらえるような日本酒を多くの人に届けて笑顔にさせる必要があったからだといいます。

仁井田本家の日本酒は、オーガニックだけではないのが特徴。

そこから編み出した道は「完全無農薬無肥料の田んぼ」を普及させることだったといいます。田んぼになるべく負担をかけない自然栽培で生産されたお米を多くの人に味わってもらい、田村町金沢の「お米の魅力」と「田園風景」の素晴らしさを改めて感じてもらう。それが日本の田んぼを守ることに繋がるのではないかと考え、2011年から田んぼの田植えから稲刈りまで体験できる「田んぼの学校」というイベントを毎年開催しています。

また現在持っている6町歩(東京ドーム1個分)の自社田を2025年までに10倍に拡大するという大きな目標を掲げ、自家発電による電気の供給や蔵内の杉並の木で作った木桶で日本酒を醸すことを目標にしています。生産者と消費者がより繋がることで農業を学ぶことの楽しさや、農家や酒蔵などの生産者をより身近な存在として感じてもらうため、日々「造り手が見える、お客様が見える酒造り」をモットーに積極的にSNSを活用するなど、蔵内の情報発信も行い、郡山市の田村町金沢を豊かな地にしたいと靖彦氏は語ってくれました。

“今の世代から次の世代に伝えたい”百年貴醸酒に込められたバトン

現在は2011年から2018年までの貴醸酒を購入できる

仁井田本家は「2011年から次の100年後に繋ぐ」そんな日本酒を醸したいという想いから、酒を酒で仕込む貴醸酒“百年貴醸酒”を造るプロジェクトを開始しました。靖彦氏は自分の世代から娘の世代へ、更にその先の世代まで語り継がれ、いつの時代も人々に愛され多くの人が笑顔になれるお酒にしたいという想いを込められていると語ってくれました。仁井田本家の貴醸酒は、酒を酒で仕込むだけでなく前年の貴醸酒を使って仕込むのが特徴です。お米は郡山産の自然米から生まれている“百年貴醸酒”は蜂蜜のような濃密な甘さで、食前酒や食後酒として飲むのがとてもオススメです。

自然由来の米の旨みと作り手の技術から生まれた日本酒「しぜんしゅ」「穏」「田村」

仁井田本家は、全量無農薬・無化学肥料に米作りと全量自然派酒母・純米・生酛仕込みにこだわった酒造りを行っています。自社田に関しては有機肥料も使わない米作りにも徹しています。この自然由来の製法から生まれる日本酒「しぜんしゅ」「穏」「田村」はそれぞれ特徴が違います。「しぜんしゅ」は、仁井田本家の創業以来からの銘柄で2017年(平成29年)の創業50周年を機に、ラベルを漢字からひらがなのデザインにリニューアルしました。

お米は契約農家の方々の自然栽培農法で作られた「夢の香」「千代錦」「コシヒカリ」「豊錦」を使用し、乳酸菌などの自然の力で発酵させる生酛仕込みと甘酒の製法としても行われる四段仕込みで造られています。仕込み水は自社田近くの井戸水を利用し、とろみとふくよかな旨味にジューシーな味わいが際立つ日本酒です。日本酒を飲んだことがない人でも美味しく飲むことができる日本酒としてもオススメです。

「穏」は、現蔵元兼杜氏の仁井田穏彦氏が1994年(平成6年)に当主に就任してから造り上げた日本酒です。お米は有機栽培農法で作られた「美山錦」「五百万石」「山田錦」「雄町」を使用し、柑橘系のフルーツを思わせる爽やかな酸味が特徴の白麹酒母を使った生酛仕込みで造られています。仕込水は蔵近くの自社山の湧き水を利用し、穏やかな香りと綺麗な甘みに爽やかな酸味でキレてくれる日本酒です。また牡蠣などの海鮮料理にも合う食中酒としてもオススメの日本酒です。「田村」は、1997年(平成9年)に仁井田本家の自然酒発売30年を機に、田村町に感謝の思いを込められて醸された日本酒です。お米は6町歩の自社田で栽培している無農薬無肥料で作られた「亀の尾」「一本〆」を使用し、米の本来の旨みを追求した自然米を使用した生酛仕込みで造られています。仕込水は”しぜんしゅ”と同様に自社田近くの井戸水を利用し、厚みのあるお米の旨みとキリッとキレる後味が特徴の日本酒です。和食との相性は抜群で、常温や熱燗などの様々な温度帯で楽しんでいただくのもオススメです。

「スイーツデー」など自家製スイーツも豊富!

仁井田本家では毎月第4週の土曜日に“スイーツデー”と称し、自然米の麹を使用した自家製スイーツを販売したり、こだわりのコーヒーや手作りパンを食べることもできるイベントを開催しています。「人々にとって健康的に良い発酵食品作り」をテーマにしぜんしゅの酒粕を使用した夏季限定の「酒粕あまさけ」や、自然米・仕込み水・天然の乳酸菌で醸された「まいぐると」、自然米の糀と仕込み水で造られた「糀甘酒」、日本酒に卵と砂糖を添加した冬季限定の「たまござけ」などが提供されます。スイーツでは日本初の自然米の米糀だけが原料の「こうじチョコ」なども提供されており、日本酒を様々な角度から楽しめることができます。

住所:福島県郡山市田村町金沢高屋敷139


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