素晴らしい音楽を聴いた時に心が震えるような感覚を日本酒でも味わってもらいたい

大木代吉本店の歩み

2011年の東日本大震災の影響で蔵は大きな被害を受けたが、復興プロジェクトにより建て替えられた蔵は復興のシンボルとして多くの人が楽しめる明るい空間に生まれ変わった。

大木代吉本店は良質な米が収穫できる土地としても有名な福島県西白河郡矢吹町に蔵を構え、1865年創業の歴史ある酒蔵です。当時は大変珍しかった、自然酒と呼ばれる無農薬栽培米だけを使用した純米造りの伝統的なオーガニック製法で醸される日本酒の「自然郷」は看板商品として1974年に誕生してから、現在に至るまで地元の人たちを中心に多くの人々に愛されてきました。大木代吉本店は日本酒業界で少しずつ認知されはじめた自然酒というカテゴリーに早くから目を付けて取り組んできた自然酒や純米酒のパイオニア的な存在でもあります。その他にも、2001年から大量生産の時代の悪いイメージがついてしまったことを理由に製造を休止していた銘柄を2018年に再開させた楽器正宗は近年、SAKE COMPETITIONなどの権威ある日本酒のコンテストなどで数多くの賞を受賞し、日本酒ファンから注目を集めています。

対照的な造りの2つの銘柄

地元を表現する自然郷と自由に表現する楽器正宗。

大木代吉本店は日本酒の他にも料理酒や梅酒も製造していますが、近年、特に注目されている対照的な2つの銘柄があります。1つ目の「自然を育み醸す」をコンセプトに掲げた、「自然郷」という銘柄は 福島の風土で育まれた酒米を使用し、福島県酵母の「TM1」で醸したテロワールが詰まった日本酒です。この土地でしか生まれない米本来の旨みと麹の甘み、酵母の華やかさが生きていることが特徴です。5代目蔵元である大木雄太氏に「自然郷」について伺うと、自然郷は地元で栽培された酒米を使用し、故郷を表現する純米づくりを大切にしていると語ってくれました。対照的な2つ目の「楽器正宗」の銘柄は「楽しさを奏でる」をテーマに掲げた、アイディアを表現することを大切に型にはめず、自由に挑戦する銘柄として商品ラインナップを展開しています。特に筆者の心を躍らせたのは「楽器正宗 本醸造 中取り」で、口に含むと酵母由来のわずかな微発泡から心地の良い甘味と爽やかな味わいが特徴的で、1日の終わりに自分へのご褒美として楽しみたいような、飽きのこないコストパフォーマンスの高い日本酒です。「故郷への想い」を表現した伝統的な「自然郷」と、あえて型にはめず自由な発想とアイディアで大木代吉商店の未来を覗くような感覚になる革新的な「楽器正宗」は対照的でありながら、蔵の過去と未来を表現する表裏一体な商品構成となっています。

和服を着た日本髪の女性が笛を吹いているレトロなデザインでありながら、鮮やかな配色や音符が施された、どこかポップな不思議なラベルは現代アートが好きな、5代目蔵元の大木雄太氏が自らでデザインした。

皇族が愛した銘柄

当時から残る大木代吉本店の柱に楽器正宗の札。

明治期より大木代吉本店の周辺は、天皇の所有地である御料地が多く点在し渡り鳥が飛来する御猟場として当時の皇族や軍人が頻繁に訪れていたそうです。「楽器正宗」の名前の由来はもともと、二代目大木代吉氏が蔵元だった頃、皇族の朝香宮様が大木代吉本店を訪れた際に、酒を大変気に入り、その時にお供としてご一緒していた宮内庁の雅楽師で君が代の生みの親とされる奥好義氏が「酒造りも楽器を奏でることも、元は同じく神様への捧げ物」と言われたことがきっかけとなり、楽器正宗というユニークな名前の銘柄が誕生しました。

大木代吉本店の5代目蔵元の大木雄太氏との一枚。

最後に楽器正宗のこれからについて大木雄太氏にお話を伺ったところ、楽器正宗の名前に相応しい、好みの曲を聞くように暮らしに潤いを与えてくれるような日本酒、楽器正宗であり続けたいと語ってくれました。今後の大木代吉本店から目が離せません。

大木代吉本店の蔵の内部は清潔な環境が保たれている。

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