正直な酒造りに取り組む“土田酒造”

土田酒造のこれまでの酒造り

土田酒造は上越新幹線「上毛高原駅」から、車で40分ほどの緑豊かな場所にあります。1907年(明治40年)、新潟出身の初代が隣町の沼田市に創業し、1992年(平成4年)に行われた区画整理により、5代目蔵元である土田洋三氏が、酒造りに欠かせない水質を最優先に考え、川場村へ蔵を移しました。

1936年(昭和12年)に「我が国が、誉れ高く、光輝きますように」という願いが込められている“誉国光”で、関東の酒蔵で唯一名誉賞を受賞しました。「名誉賞」とは、戦前に行われていた日本酒の新酒鑑評会に連続で、入賞した蔵だけに与えられる名誉ある賞です。

また、その当時の日本酒の酒蔵の数は今の倍以上あり、 その激戦を連続で勝ち抜いた蔵だけ「名誉賞」が贈られます。全国でも、この快挙は数蔵しか成し得られず、「100年飲んでも飲み飽きしない酒」として、多くの地酒ファンを虜にしました。

原点回帰の日本酒造り、新たな挑戦も忘れない蔵元土田祐士氏の追求心

土田酒造6代目蔵元の土田祐士氏(写真左)

土田酒造は、現在6代目蔵元の土田祐士氏と若手杜氏の星野元希氏を中心に、2013年(平成25年)に、山廃酛造りを取り入れ、酵母無添加による酒造りに挑戦。そして、2017年(平成29年)には、全量山廃純米の酒造りに完全シフトチェンジしました。麹や酵母の本来の力を活発にさせるための造り方が、日本酒の造りの本質だと伝えるべく、飲み手に後ろめたくない酒造りに取り組んでいます。

土田氏が、酒蔵業を継ぎ始めたのは、小惑星探査機「はやぶさ」の打ち上げで国内が盛り上がった2003年(平成15年)のことで、4人兄弟の末っ子である土田祐一氏は当時、大手ゲーム会社で勤めていました。元々、土田氏の父である土田洋三氏が、5代目蔵元として酒蔵業に務めており、“誉国光”という銘柄と、醸造アルコールを添加した普通酒作り中心の酒造りをしていました。

土田氏も、「酒蔵業は誰かが継いでくれるだろうし、自分はやらないだろうな」という考えもあったため、全く日本酒に興味はなかったそうです。しかし、微生物は目に見えない所で、活発に活動し生きている。それが、日本酒を形作る。その魅力に惹かれ、ゲーム会社を辞め、酒蔵業を継いだとのこと。最初は、広島の醸造研究所で約4か月醸造の基礎を学び、その後は群馬の酒蔵などで約5年間酒造りの修行をされていました。

また、群馬を拠点にした若手の造り手が集まる会合があった時は、情報共有や醸造技術のアドバイスを積極的に吸収し、酒造りに対する追求心を日々鍛錬していたそうです。これらの5年間の修行を経て、その年の2008年(平成20年)に土田酒造の6代目蔵元兼杜氏に就任しました。

土田氏がここまで酒造りを追求する理由は、土田氏自身が、ゲーム会社に勤めていたころのクラフトスピリッツ以上に、データで表しにくい、人間が制御できない、そこに自然の広大さと人間が普段感じることのできない世界があり、それを造ることのやりがいを感じたからだと言います。

土田氏が、酒造りで大切にしているのは、“オープンに出来る日本酒を醸したい”という熱い想いと、“菌と人との酒造り”をテーマに、菌の力を最大限に引き出す技術を研鑽し、菌と人の協演にて、常に新しい味を醸し出すこと、と語っていました。

最近では、消費者の方達の意見を聞きたい、より身近に消費者の方達とつながりたいという思いから、昨年の11月を機に、SNSでのライブ配信なども開始しました。そこでは、土田酒造の日本酒を積極的に紹介し、現代の消費者は日本酒に対してどのような思いを感じているのかというテーマなどで、自由な意見交換をすることで、より消費者の方達の意見を聞けることができるそうです。

酒蔵に直接、訪問することは、消費者にとってはハードルが高く、容易ではありません。だからこそ、現代の生活に欠かすことの出来ない、日常的に使用しているSNSなどのコンテンツで、まず土田の日本酒、そして日本酒に対する意見が聞ける機会を、造り手側が積極的に発信していく必要性があると、土田氏は語っていました。

土田酒造の酒造り改革によって誕生した日本酒“土田”

土田酒造の銘柄“土田”

土田祐一氏が蔵元になり、星野元希氏が杜氏に就任してから、初めて醸した「土田」は、山廃酛仕込みで醸される純米吟醸酒です。山廃は、その仕込み由来特有の酸や味わいが出やすい日本酒であり、とても味わい深いのが特徴です。しかし、土田は、その山廃独特の酸をあまり感じさせずに、むしろ旨口でジューシーな味わいが特徴で、ステーキなどの肉料理、チャーハンなどの中華料理、脂身の多い魚料理にとてもぴったりな日本酒です。

現在、挑戦のひとつとして“土田 菩提酛×山廃酛 純米吟醸”が醸されています。菩提廃は、山廃酛を造るよりも高温の環境のため、酵母や乳酸菌を育てやすい反面で、酒造りに必要のない菌まで育ちやすいので、温度が低く過酷な環境の山廃酛に菩提酛を掛け合わせることで、蔵付き酵母を増やし醸造しています。また、「土田」は耐久性が強く、常温保管も可能です。

土田氏は、実験として真夏に車の中に5ヶ月間入れたら味の質はどうなるのかを調べた時に味の質が低下していなかったのは、さすがに驚いたそうです。そういう発見が面白く、ついつい酒造りを探求していきたくなると土田氏は、語っていました。あらかじめ、データ化されたもの、マニュアル化されたものも良いが、定められてないもの、正解がないものを研究する方が、発見につながったりする。

そして、ただこの世にないものを造るのではなく、造り手が楽しく酒造りをしていこうという思いが広がると、日本酒の造りにも興味を示してくれる人も増えるのではないか、その言葉に酒造りに対する情熱、信念が土田氏からは感じることができました。

住所: 群馬県利根郡川場村川場湯原2691


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