人と人の出会いを大切にする酒屋“矢島酒店”

矢島酒店の店主 矢島幹也氏

船橋の地酒専門店“矢島酒店”とは

矢島酒店の景観

千葉県船橋市に位置する“矢島酒店”は、東武野田線の馬込沢駅から徒歩5分ほどの場所にあり、常時500品以上の地酒を扱う酒屋であり、日本酒はそのうちの90%の割合で取り扱っている。店主の名は矢島幹也氏。祖父の代から酒屋として経営しており、現在の矢島氏が3代目となり、酒屋の店主として継いで経営をしている。矢島氏は、「日本酒に関わっている全ての人たちで日本酒を広めていくこと」「日本酒を通して人々の生活を豊かにすること」を目標に、来店した人が矢島酒店なら安心して日本酒を購入出来ると感じるような店舗づくりを大切にしている。豊富なラインナップの選定基準は「酒蔵の人たちとの出会いやご縁、熱き想いにおいて心が通い合った造り手たちと取引をしていきたい」「酒蔵や造り手の情熱的な酒造りを広めたい、その酒蔵の魅力的な日本酒を伝えたいと思える愛着の湧く銘柄」といった日本酒を届ける。取引先の飲食店との関係性も大切にしており、飲食店の方にも積極的に造り手の情報を伝えることも忘れない。

日本酒の飲食店GEM by motoの店主 千葉麻理絵氏の著書(矢島氏も作中に登場)

今でこそ、日本酒は多くの種類が特定名称酒として市場に出ており、飲み手も選びやすくなった一方で、日本酒が好きな人口の掘り起こしはまだまだ少ないと矢島氏は語っていた。日本酒バルなどの日本酒を専門的に取り扱う店舗が増え、日本酒を気軽に楽しく飲める環境が増え、特定名称酒自体の魅力も多くの人に知れるようになってきたが、日本酒自体の魅力の底上げや掘り起こしを業界としても矢島酒店としても取り組んでいく必要があると感じているそうだ。
日本酒の飲酒人口を増やす為に活動している“和醸和楽”に加盟し日本酒の普及を目指し、若者など日本酒をこれから知る人に向けた「0杯から1杯へ」というモットーを掲げ普及活動に取り組んだり、矢島酒店のある船橋市などの地元の人に向けた日本酒イベントの開催、日本酒に関する本の出版なども検討している。

広島県の“宝剣酒造”と新潟県の“加茂錦酒造”との出会い

広島県呉市の蔵元“宝剣酒造”の代表銘柄“宝剣”

広島県呉市に蔵を構える宝剣酒造の蔵元兼杜氏の土井氏とは、20代半ばの頃に出会い、当時は約150石の石高、販売店舗も15店舗と限られていたそう。矢島氏が宝剣酒造に訪問した際、5代目杜氏の土井鉄也氏と出会い、「絶対に誰にも負けたくない」「絶対に美味しいお酒を醸したい」という酒造りに対する熱き想いを理念として掲げていた姿に心を打たれ、一緒に日本酒を広めていく関係性になったそう。また、40代になって後悔するような酒造り、日本酒の発展のための関わり方はしたくないという精神に強く感銘を受け、心が通い合った部分もあると矢島氏は語っていた。現在、代表銘柄の“宝剣”を矢島酒店で取り扱っているが、お互いに納得するまでには4年の歳月が掛かったそうです。現在は約1200石製造しており、数が限られているなかで、土井氏自身の、売りたい気持ちと本当に価値をわかってもらえる人にしか売りたくないという造り酒屋を運営していくうえで大切なこだわりとギャップがあり、土井氏自身の酒造りへの熱き想い、そして日本酒への飽くなき探究心と強いリスペクトが感じられたという。その強い想いこそが、矢島氏が酒屋を20年間経営をするうえで、本気で酒蔵の人と関わり、その人となりからみえる日本酒への愛情を知り、人対人で高め合えるような関係になることが矢島氏が矢島酒店の在り方を考えるうえでの基本にもなったという。矢島酒店と宝剣酒造は酒屋と酒蔵として強い繋がりがあった。

新潟県加茂市の蔵元“加茂錦酒造”の代表銘柄“荷札酒”

新潟県加茂市に蔵を構える加茂錦酒造とは、2015年から「荷札酒」という銘柄を取り扱っている。きっかけは、その銘柄を確立させた、若き杜氏の田中悠一杜氏が荷札酒を持ち矢島酒店へ売り込みに来たことだという。田中杜氏からは、モノづくりに対する熱意や自分の商品への愛情が深く感じられたという。ただそれだけではなく、「自分が造りたいお酒を斬新なラベルの荷札というカタチでも明確に示し、荷札の中に記載されているバージョンはその酒に対して、田中杜氏が手応えを感じることができた時に、バージョンをアップさせる」というユニークな一面も、購入される方が注目するポイントのひとつになっている。そんなユニークな一面が消費者にも伝わり、世間の日本酒ファンの心を掴み話題を呼んだ。四季醸造という醸造方式を採用し、製造量ではなく、品質を高められるように一年中理想の形で、日本酒を造ることができるようにすることを大切にしている。そんな、田中杜氏の熱きクラフトマンシップに惹かれて、矢島氏も大切に荷札酒を取り扱っている。

矢島氏の酒屋に対するこだわり

矢島氏が持っている強いこだわりは、日本酒も多店舗化を図ることが全てではなく、店舗を増やすことはあくまで目的のための手段であり、他にも取り組めることはあるのではないかと矢島氏は考える。今まで取り組んできた酒屋の日々の業務内容や日本酒を学びお客さんへ還元すること、お客さんや飲食店から見たお店づくりに取り組む方が良いのではないかと語っていた。そのためにも矢島氏は、3年前から、社員との酒蔵への研修旅行を取り入れはじめ、社員にも酒蔵の風土や空気感、酒造りの様子、蔵人の情熱を訪問することで体験的に学び、会社としての共通認識を深めるために取り入れ始めた。日本酒の味を知ることは簡単なことだが、日本酒が生まれる土地を知ることや蔵人に直接会うことは容易ではないため、矢島氏が築いてきた蔵元との関係性から、社員も含め一緒に酒蔵で造り手と売り手の立場から意見交換も兼ねて酒を酌み交わす機会も取り入れてもいる。そうすることで、社員それぞれが感じた日本酒の体験や想いが混じり合い、矢島酒店の質の向上、日本の伝統産業へリスペクトにも繋がるのではないかと語っていた。

一緒に日本酒の魅力を伝えていきたいと感じたスタッフたちには熱心に日本酒の魅力を伝えていき、スタッフの多さではなく、店舗の質を一番に考えてスタッフにも日本酒の知識を深めてもらいながら、楽しみながら働いてもらうことが大切であると語っていた。スタッフにも、日本酒の仕事を楽しいと感じてもらうことが日本酒のイメージ向上にも繋がり、飲酒人口を増やすことに繋がるのではないかと考える。矢島氏の取り組みや熱い想いがが蔵元にも伝わり、現在では矢島酒店のために造られたオリジナル銘柄(PB)も多数取り揃えている。また矢島氏が、同世代の蔵元との苦労話を感慨深そうに話されていたのも印象的だった。この様子が蔵元との強い関係性を物語っていた。

矢島氏が考えるこれからの日本酒の伝え方

今までと取り組む内容は変わらないが、蔵元の方たちが造ってきた日本酒に対する熱意や魅力は、今も昔もこの先も酒屋として積極的に発信していくべきだと語っていた。時代とともに日本酒の魅力の発信方法は変化してくるが、蔵元の方たちが持っている日本酒に対する熱意は、現地まで実際に足を運び、直接会わないとわからないことが多い。日本酒に対しての情報はまだまだ少なく、ネットで情報を知ることが容易になったこの時代でも、日本酒の情報はまだまだ少ないと語っていた。だからこそ、酒屋が蔵元の代弁者として、現代ならWebやSNSを積極的に活用し、直接こだわりを伝えながら、蔵元の方が消費者に伝えきれない部分を代わりに補いながら伝え、蔵元の想いや熱意を酒屋が情報を提供し、消費者に正確に伝えていく必要があると語っていた。興味を持ってもらえるような伝え方やお客さんの日本酒の知識に合わせた伝え方で、日本酒の魅力を伝える必要性があると矢島氏は考える。そして、日本酒に対し、リスペクトし合える関係として酒蔵と10年、20年と長いスパンで付き合っていける関係性を築くことの出来る酒屋でありたいと語っていた。

住所:千葉県船橋市藤原7丁目1-1


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